Sophitia on SoulCalibur III Website

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『ただ天の光だけは、清く輝いて汚点をとどめない』
……ゲーテ「格言と反省」
 子供達を呪われし運命の鎖から解き放たんがため、確固たる意志とともに旅に出たソフィーティア。飛び出していったカサンドラのことも心配だ。一刻も早くソウルエッジの元へ行き、これを破壊しなくては……。
 蒼い鎧をまとった大剣の騎士。その噂を辿って行った彼女は、オストラインスブルク城を望むライン川の岸辺へと至る。立ち込める霧の向こうに浮かび上がる不気味な城の影。禍々しい気配に満ちたこの地には、獣や鳥の類でさえその姿を見い出せない……。
 静寂を切り裂いて、不吉な鳥の鳴き声が彼女の耳を打ったその時――霧の奥から、幻が形を得たかのようにして人間が現われた。深緑の衣装に身を包んだ小柄な少女。その装束はところどころが破れ、いびつな縫い目の合間から素肌が覗いている……。
「こんにちは。とってもいいお天気だね!」
 あっけらかんとして、少女は無邪気な笑顔を見せた。だが、ソフィーティアは油断なく武具を構える。少女の携える異様な大きさの輪……その肢体とはあまりに不釣り合いな物体が、人を殺めるためのものであることを見抜いたからだ。
「あのお城には、もうソウルエッジはないよ。……それより、あたしはあなたの子供達と遊びたいな?」
 少女がソフィーティアに向けた微笑み。そこに、人の心に安らぎをもたらす優しさはなかった。
 無言で斬り込むソフィーティアの剣閃を、少女は大きく身を引いてかわす。
「残念だけど、まだその時じゃないんだ。時が満ちたら、また会おうね……」
 くすくすと笑い声を漏らす少女は、そのまま霧の向こう側へと溶け込んでいく。
「待ちなさい!」v 追おうとするソフィーティアを、濃霧が阻む。
「月夜の晩に 森へと出かけた姉弟は
 霧に迷って 消えてしまいました……」
 子守唄を口ずさむような声が、遠くで響いた。
 子供達が危ない……! 急ぎ帰郷したソフィーティアは家族が無事であることを知り、胸を撫で下ろした。だが、安心はできない。彼女の子供達を狙う者が消え去ったわけではないのだ。
 邪剣の脅威は断ち切らなければならない。けれども、このまま留守にするわけにはいかない……。迷いを感じた彼女は鍛冶神ヘパイストスに祈りを捧げるため、神殿へと向かった。
 何らかの導きが得られるかもしれない。その思いを抱いて神殿を訪れた彼女を待っていたのは、他ならぬあの緑装の少女であった。ソフィーティアは、とっさに神殿に奉納された剣と盾を手にする。
「子供達に……手出しはさせない!」
 毅然として、剣の切っ先を少女に突きつけるソフィーティア。
「あはは! やろうっていうの? ……面白いじゃないっ!」
 歪んだ熱狂を含んだ口調でそう言うと、少女は体当たりに近い一撃を繰り出した。斬撃をかろうじて受けたその一刹那――ソフィーティアは刃越しに覗く深い紫色の瞳に、狂気とは異なる一抹の感情を読み取った。
「幸せを知らないのね。可哀想な子」
 思わずこぼれたその一言に、少女がぴたりとその動きを止める。
「哀れまれるガラじゃ……ないんだよっ……」
 冷たく掠れた声にはっとして少女の顔を見やったソフィーティアは、それまでの作り笑いとは似ても似つかぬ、異様なまでの憎悪の表情を見た。当惑する彼女を軽く突き放すと、少女は武器を構えたまま間合いを取る。
「ちっ、興が冷めた……。あんた……ムカつくよ……」
 ソフィーティアを睨み付けるその瞳に、先ほど垣間見えた寂しさの影を見出すことはできない。
「あんたの子供達は……必要になったら、その時迎えに来る……」
 それだけを言い残すと、少女は飛ぶようにして去っていった。
 ひとり神殿に残されたソフィーティアは、静かに考える。子供達のことは心配だ。しかし、怖れていては何も変わらない。確かに、今の自分は「神託の戦士」ではない。けれども……。
 私は戦うことができる。愛する人のために。子供達のために。
 こうしている間にもソウルエッジのもたらす災厄は広がっているに違いないのだ。災いは元から絶つしかない。愛しい我が子を救うためにも……!
 我が家へと帰ったソフィーティアはロティオンに自らの決意を打ち明けると、再び旅装束をまとった。
「子供達をお願いします。……どうか、無事で」
「君も気を付けて。女神ニケの御加護を」
 神の声は聞こえなくとも、私はやってみせる。
 己の成すべきことを信じ、守るべき者のために戦おうとする彼女の瞳には、未来を照らす希望の光が映っていた。